Making of “gnarly” 第4回 「撮影・仕上げ編」 (1/4)

2013年6月12日

さて、Making of "gnarly" 第4回目です。今回は、前回 第3回「アニメーション編」で作成した動きをもとに、完成画面へと仕上げていきたいと思います。

(完成したアニメーションは、gnarlyさんのウェブサイトに掲載していただいています。)

 

 

 

撮影とは?

 

今回は「撮影・仕上げ編」と題してお送りしますが、「撮影」と言われても何の事か分からない方もいると思います。撮影というと、写真を撮るカメラやビデオカメラを使うことを想像しますね。実はアニメーションの制作においても、この「撮影」と呼ばれる工程があるんです。

 

デジタル以前のアニメーション制作では、カメラの付いた「撮影台」という可動式の台の上に、背景の描かれた画用紙と、キャラクターなどの描かれた透明なセルロイド紙(セル画)を重ねて置いて、それを1コマずつフィルムに「撮影」していました。

 

デジタル制作のアニメーションにおいては、撮影台もフィルムも使わない代わりに、コンピュータ上で背景やキャラクターなどを重ねて、画面を作っていきます。

この工程を、アナログ時代の慣例に従い「撮影」と呼んでいるんですね。

 

 

 

撮影に必要な素材の検討

 

ではここで、今回どのようなプランで撮影を行うかを確認しておきましょう。

こちらの画像をご覧ください。左が前回作成した3DCGの画面、右がオリジナルのロゴの一部です。

 

 

shootingplan

 

 

 

前回3DCGで作成した画面に赤く印をつけた部分が、オリジナルとは異なっていることに気付いたでしょうか?バクの背中・耳・足元に輪郭線がなかったり、足や地面の白い点々が、地面の凸凹に埋まったりしています。このままでは良くありません。

 

「耳の輪郭はテクスチャ(第1回参照)で描いてしまえば良いのでは?」と思うかもしれませんが、よく見ると左耳(奥側)には輪郭がありません。つまりこの場合は「カメラから見て耳と体が重なった時だけ輪郭が見える」ように表現するのがベストでしょう。

 

また、足と地面の境目の白い輪郭は、左下方向にのみついています。これは、バクのシルエットを白く塗りつぶして左下にずらして重ねれば表現できそうです。

 

地面の凸凹に埋まってしまっているバクの足や白い点々は、地面と別々の画像にして後から重ねることで、3次元的な埋まりが生じないようにしたいと思います。

 

余談ですが、これらの検討は、実際にはモデリングに入る前の段階で済ませてあります。「どのようにモデリングし、動かし、撮影すれば、目指す絵になるか」が、絵作りの出発点になります。

 

 

 

レンダリング

 

さてそれでは、撮影に必要な素材を画像ファイルとして書き出していきます。これを「レンダリング(rendering)」といいます。カメラや光源の位置などをもとに陰影や光り具合などを計算したり、アニメーション用に絵を何枚も連続して書き出したり、といったことをソフトが自動でやってくれます。

 

また、「指定したモデルだけ」とか「色だけ」とか「陰影だけ」とか、シーン内に含まれる様々な要素を、別々の画像ファイルとして書き出すことも出来ます。これを利用して、先ほど検討したような素材を全てレンダリングしていきます。

 

で、レンダリングした素材がこちらです。

 

 

 

 

「マスク」とか「法線」とか、見慣れない言葉が出てきましたね。

「マスク」というのは、撮影の際に、効果を加えたりする範囲を指定するための素材、と思っていただければよいです。

「法線」というのは、辞書で調べると「曲面上の一点で、その点での接平面に垂面な直線」とあります。何のことやらよく分からないかも知れませんが、この場合は、「モデルのある面が、カメラに対してどのくらい傾いているか」と考えればOKです。カメラに対して正面に近いほど白く、横(垂直)に近いほど黒くなっています。今回はこの素材を輪郭の処理に活用したいと思います。

 

 

 

3DCG以外の素材

 

さて、3DCG素材のレンダリングが済んだので、その他の2D素材も用意しておきます。文字を1文字ずつバラバラにしたり、流れ星の軌跡を描いたり、地面の下半分を隠すための素材を作ったりました。

 

 

2D_materials

 

 

 

文字とイラストの位置合わせのために、オリジナルのバクのイラストも配置しておいて、撮影の時に隠します。

 

さあ、これで必要な素材が全て出揃いましたので、撮影に入りたいと思います。

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